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フォトグラファー2.0の時代

実は明日ヒーコで公開されるのですが、その記事のドラフト版をここにあげてみます。これまでのフィルム時代におけるフォトグラファー像を1.0とした時に、2.0とはなんだろう?という話をまとめてみました。これは今月開催されるヒーコトークショーでも話題になりそうな内容なんだけど。

これは殴り書きしたドラフトなので、ヒーコにアップされるのは、清書版になります。よりマイルドな表現になるというか。言葉を選ばず書いている版はこちらです。(といってもそれでもマイルドにしてるけども。)

以下!

お疲れ様です。平成最後の黒田明臣 @crypingraphy です。ついに平成最後の黒田明臣になってしまうことにいささかの不安を覚えながらも、その向こう側で新年号最初の黒田明臣が狂喜乱舞しております。ということでお察しの通り今日はフォトグラファー2.0ということを書いてみたいと思います。フィルムからデジタルへと変革を遂げた平成におきた小さなパラダイム転換の話です。

目次

・フォトグラファー2.0の時代
・実は今更な2.0
・フォトグラファー1.0
・フォトグラファー2.0
・グレードではなく、スタイル
・フォトグラファー2.0とは
・SNSやインターネットの活用
・クロスボーダーな活躍
・インフルエンス
・提示からコミュニケーションへ
・オンラインとオフライン
・ネットワークの多様化
・1.0から2.0へ
・フォトグラファー2.0として。
・フォトグラファー3.0も。

フォトグラファー2.0の時代

フォトグラファー2.0。いったい突然何を言い出したのかというところですが、ちょっと平成も終わりフォトグラファーのSNS活用も成熟してきた昨今。成熟、してきてますよね?どうでしょう。自分はもう熟れきっていると思ってるんですけど。どうかな。

何はともあれ、そんな時期というのもあり、このフォトグラファー2.0もしくは写真家2.0といったキーワードを提唱したいと思っています。

2.0ってなに?視力の話?けっこう遠くまで見えてない?と思ったあなた、その直感はかなり鋭いと言えません。

2.0というのは、旧来と比べて新しいムーブメントやスタイルを指しています。

2.0だから1.0より優れているとかそういう話ではありません。

実は今更な2.0

フォトグラファー2.0とは言いますが、これは今更なものだったりします。というのも、自分をはじめSNSを中心とした活動を繰り広げているフォトグラファーが、各種SNS上で注目されるようになり既に数年が経っており、先に述べたとおり既に成熟に近い状況です。ここから円熟に向かうでしょう。

そして世の中にはフォトグラファー3.0と思わしきスタイルも出てきているように感じています。2.0を説明する前にいきなり3.0というのも意味不明なので、3.0を語るにもまずは2.0からでしょうということで、簡単な定義をして、提唱してみたいという思いから自分なりの2.0をまとめてみました。

フォトグラファー1.0

2.0を語る前に、まずは1.0とはなにか。ということを考えないといけないですよね。ステータス問わず、つまりプロフェッショナルであろうとアマチュアであろうと写真を撮るということを行う人たち全員が当てはまると思います。撮影した写真をアナログな範囲で公開したり、グループ展をしたり、何処にも公開せず残し続けている人などが主に当てはまるでしょう。クラシックで伝統的なスタイル。そして、繰り返しになりますが1.0ということが2.0より劣っているとか古いとかそういうことではありません。

フォトグラファー2.0

比べて、フォトグラファー2.0は、世の中のテクノロジーやサービスを利用することで、多様な観点から自己を価値化する傾向があります。

後述する2.0ならではの特徴は、あくまで特徴であって優劣ではないのですが、時としてその特徴が優劣や勝敗や金銭やステータスといった結果にあらわれることも否定できないポイントではあります。写真を世の中に発信するだけではなく、自身に価値が宿るようにサービスを利用することは総じてフォトグラファー2.0的な行為だと言えると思います。

これは時代を味方につけた人間の強みという点では、不変の法則でもあるかもしれません。

グレードではなく、スタイル

フォトグラファー2.0というのはグレードではありません。上とか下とか、そういう概念では断じてないわけですね。プロとアマとかそういう二元論とも違います。あくまで、写真と向き合うスタイルだと考えることが肝要です。

クラシックでトラッドなスタイルに価値があることと、モダンでモードなことにも価値があるのはベクトルは違うもののどちらもイケてる価値に違いないですもんね。

とことん硬派に1.0というのも一興。日本国内、名のある写真家の方々なんかはそうなるでしょうしね。

フォトグラファー2.0とは

抽象度の高い概念ですけど、もう少し具体的にどういった特徴があるのかまとめてみましょう。

SNSやインターネットの活用であったり、それに伴うインフルエンスの獲得、発表からコミュニケーションへの発展、オンラインとオフラインの有効活用や、ポジション、ネットワークの多様化などが挙げられます。

フォトグラファー2.0は、おそらく自分が写真をはじめる前から芽は出始めていたのだと思います。2009年頃、Flickrや500pxなどの写真専門のウェブサービスが次々と誕生し、TwitterやFacebook、InstagramといったSNSが成長、拡大するのと比例してフォトグラファー2.0も成長してきたのだと思います。

自分は2014年から写真に没頭しはじめましたが、カメラをもっていた2012年頃にも既にそういった写真系のウェブサービスは利用していました。というよりそういうサービスがあったからこそ2014年からの傾倒につながったとも言えるかもしれないですね。

そういう意味では、生粋のフォトグラファー2.0であるのかなあと思います。

とくに、商業の世界に足を踏み入れて、広告やグラビアを中心とした各雑誌でご活躍中の先輩方と話をしていると、特に感じますし、最近は特にそれを期待されている側面もあるかなと思います。

フォトグラファー2.0の特徴

ということで、特徴の数々です。

SNSやインターネットの活用

まず外せないのがこれでしょうね。SNSやインターネットの活用。これまで作家活動や商業活動、直接営業、紹介など、アナログな手段で知ってもらうことが基本だったところにあらわれたソリューションです。

日本全国インターネットが飛び交っていて、誰もがスマートフォンを持って、インターネットを活用する時代にあっても、フォトグラファー全員がSNSやインターネットをするわけではないのだからおもしろいですね。

インターネットやSNSの普及なくして2.0の概念は訪れなかったでしょうね。それだけ革命的なテクノロジーなので不思議はないんですけど。

スタンス

フォトグラファー2.0は、意識しようとしまいと、スタンスを表明しています。

これは強い意志をもって表明しているかもしれませんし、場合によっては一切の意志がないであろうということを図らずとも表明してしまっているかもしれません。少なくとも、SNSに一度でも登録して、誰か一人とでも繋がってしまうということはスタンスを示すことでもあると自分は考えています。

・SNSに登録して継続して写真をあげている。
・作品写真もプライベート写真も隔てずあげる。
・何となく登録して誘ってくれた数人とだけ繋がったけど、日々ポストすることはない。
・登録していて眺めてもいるけど発信することはない。
・発信しているけどできるだけ自分のイメージを正しく伝えられるように言葉や写真を選ぶ。

さまざまな活用方法がありますが、これらの人々はそれぞれスタンスを表明しています。

継続的にSNSを活用するのか、作品はプライベートと切り分けて見せたいのか、SNSを通して人とつながることを楽しんでいるのか、避けたいのか。自分が発表することを楽しまなくても人の情報を得ることを楽しめてはいるのか、など。

フォトグラファー2.0は、ただ写真をアナログ・ローカルに見せるということ以上にその人の生き様やスタンスそのものを世界に対して表明していると言えます。

それがブランドマネジメントであり、ブランド・エクイティの重要さを認知している人ほどそこに意識を働かせているはずです。多くの場合は無意識に。

そして2.0フォトグラファーとして活躍している人ほど、そこは上手な傾向があるとも言えると思います。これは感覚値ですけど。

クロスボーダーな活躍

旧来フォトグラファーは、写真単独で写真家として活動するのが基本路線だったと思いますが、他のスキルと組み合わせることで活躍するようになる人が増えてきていたり、本来の持ち物に写真を通して表現する人が増えました。この理由は二つ考えられると思っていて。

・写真のメディア機能
・一億総フォトグラファー化

もともと写真というのは何とでも食い合わせの良い媒体で、メディアでもあり情報としても機能していて、その他のスキルや技能と合わせやすいんですよね。例えば、言葉を巧みにあやつることでプレゼンスを発揮するタイプのフォトグラファーの台頭や、アパレルブランドのオーナーが自ら写真を撮ってルックやキービジュアルに使ったり。それをフォトグラファーと呼ぶのかとかいう硬派な意見もありそうだけど、そういう発想も1.0ならではなんですよね。

さらに、デジタルカメラの普及によって一億総フォトグラファー時代となり、自分のように元々ただのフリーランスエンジニアだった人間が写真をはじめてそれでお金をもらうようになったりするキャリアシフトも2.0的ですね。キャリアチェンジのように大胆に変更するのではなく、並行して活動しながら少しずつシフトしていくというわけです。

インフルエンスからのムーブメント

もちろんトップオブトップのフォトグラファーにインフルエンスが備わるというのは、いつの時代も変わらずで、高いクリエイティブが世の中に影響を与えたりそこに続くクリエイターに影響を与えたりというのはフォトグラファーも例外ではなく取り上げるまでもないんですけど。

これが、2.0になると拡大の仕方が尋常ではないんですよね。SNS内でのタグに代表されるような小さなムーブメントであったり、似通ったアウトプットを無数に生み出したり、写真というアウトプットではなく写真に関する議論に発展したり。クリエイター、とも言えるような鑑賞者が、撮ってみたいとなる現象が生まれていって、その連鎖の中に組み込まれていく傾向があるように思います。フォトグラファー2.0は、発信する側も受け取る側も、このムーブメントの渦に飲み込まれる傾向があります。

そしてこれらのムーブメントは、それぞれがインターネットというパブリックな空間であるにも関わらず適度に独立していて、そこに属さない人には全く別世界ということもポイントですね。

提示からコミュニケーションへ

これもインターネットの普及とウェブの進化という歴史をなぞった内容ですが、フォトグラファー同士も一方通行の提示からコミュニケーションへとシフトしました。フォトグラファー2.0同士は、認知しあい、繋がり合い、認知と出会いまでの間をインターネット空間上でさまよいながら、言葉を交わすことはなくとも目に入る情報や耳に入る情報から空想だけが膨らんでいったり。

SNSの世界では、言葉を交わさずとも、無言のコミュニケーションが行われます。2.0のネットワークに入った人間は望む望まないにかかわらず、意識され意識していくことになります。鑑賞者がただホームページを眺めているウェブ黎明期のスタイルでは考えられなかったことです。おそらくホームページ全盛期が1.5くらいでしょうか。これがホームページの世界からSNSの世界になり、そこに身を置き、写真を提示し、誰か他人とつながり、そのつながりを他者に明らかにすることが2.0的です。

オンラインとオフライン

オンラインとオフラインという点も特筆すべき点です。写真を鑑賞するポイントはこれまではオフラインのみだったところに、オンラインという概念があらわれたことで、オンラインとオフラインの境界がより明快になったように思います。

自分も歴史の浅い人間なので、これは想像になりますが、かつて雑誌や映像を中心に写真が使われていた頃も今でいうオンラインのみに存在するという感覚はあったのだと思います。その人が何者だかはわからないが作品だけは知っているという一方通行な認知。我々がいま言葉の通じないハリウッド俳優をスクリーン越しに眺めるような感覚に近いですかね。(言葉の通じる芸能人はもはやSNSで知れたりするので感覚値としては遠いだろうと想像します。) 逆に言えば、オンラインのみで活動して交流もせず発表し続けるフォトグラファーというのは、例えSNSを利用していても1.0的であると言えるのではないかと思っています。

少し話がそれましたけど、フォトグラファー2.0の時代になり、オンラインとオフラインを行き来できるようになったことで、それぞれの特性を効果的に利用するフォトグラファーがあらわれてきました。自分もそのうちの一人に分類されると思いますが、オンラインで効率性の高いことはオンラインで、オフラインでやるべきことはオフラインで。

これもフォトグラファー2.0特有の動き方で、さらに加速・多様化していくだろうとも想像しています。

ネットワークの多様化

最後にネットワークの多様化というところも無視できません。フォトグラファー2.0の人間は、恵まれたテクノロジー環境を個々人の知恵と発想で駆使して、従来では考えられなかったようなスピードと範囲でつながりを獲得していきます。

そのつながり一つ一つは多様でオープンなのが特徴です。「一体どうやって知り合ったんだろう」と思えるような知り合い関係を築きあげていて、当然写真そのものであったり、情報であったり、写真仲間といった横のつながりを加速度的に広げていきます。

これは2.0のフォトグラファー間でも、個性によって格差を生むポイントでもあります。SNS普及の下地ともなった六次の隔たりという仮説を裏付けるよう現象を、自分も何度か写真を通して体験しています。

さらに、それらのつながりが小さなコミュニティをつくりあげて、やがてコミュニティが意味をなさないほどにすべてがつながりあって一つになっていく。と自分は考えていますがこれはまた別の機会で話しましょう。

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