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Synology NAS を 10GbE で繋げて最強の環境を手に入れるための備忘録

CP+ 2019 では Synology NAS のプロモーションも兼ねてセンターステージで講演させていただいたんですが、思った以上の先輩プロカメラマンや友人などから、電話やLINEで質問が立て続けにあったのでちょっとまとめてみようと思います。ちなみにこれはタイアップでも何でもないので好き放題書きます。

相談内容はいくつかあったのだけど。

・Synologyってどうなの?
・Droboとどっちが良い?
・10GbEで実現したってどうやったの?なに買えば良い?
・速度どれくらい出たの?

これ、ほんとに個人的にもびっくりすることに累計先輩方含む10人以上から聞かれたりして、みんなこのあたりは悩んでるのだなあと。

おもしろいのは、CP+ の講演を聞いてたアマチュア層とかファン層ではなくて、ガチプロばかり。まあたしかにデータに関する意識レベルは仕事でやる分高いというのは当たり前か。

個人的にもすごく今回の構成にたどりつくまでには悩んでたので、共有しておこうかなと思ってラフに書こうかなと思います。

Synology ってどうなの?

これについてはGOODでした。

自分はこれまでNASだと4社ほど、有線だと5社ほど利用しているけど、安定性という意味でも操作のわかりやすさという意味でもUIの完成度という意味でも、必要十分です。

UIのスタイリッシュさは、アプリベースのDroboに軍配があがるかなという印象だったりするのだけど、Drobo Beyond RAIDは自分が知る限り速度に問題があって常時接続するストレージとするには難ありでした。

また、拡張ベースで10GbE対応してくれたり、SSDキャッシュができたりというのもGOOD。ラインナップが多すぎて何を選んだらよくわからない。というのは課題かな。このあたりはLPを工夫するとかして改善は可能だと思うけども。

Droboとどっちが良い?

この相談も多かった。自分がはじめて購入したNASはDroboだったのだけど、これはかれこれ4年ちょっと前。Drobo自体はNAS以外にも色々インターフェースは用意されているので、NASだけで語る事はできないと思うのだけど、個人的にNASだけで比べると遅めな傾向があるという印象。

ただ、いまは iSCSI SAN 対応された筐体とかもあるようなので、改善されている部分もあると思います。

Drobo最大の魅力は、やはりBeyond RAIDにあると思っていて、異なるSSDやHDDをいつでも追加したり減らしたりすることができるので、少しずつ予算に合わせて拡張していくというフローが許されている点。容量もメーカーも異なるHDDを後から追加してもボリュームは一つとして認識されたと思うので、これはすごく魅力的。

ただし、こういうデータ管理を真剣に考えるレイヤーの人達は、予算の課題はあるかもしれないけど、最初からフルスペックに近い形でボリューム組んでしまって、筐体ごとスケールもしくは一部データはHDDごとコールドしていくという運用が本質的だと思うので、Droboの強みとは親和性はあまり高くないのではないかなと予想しています。

自分も一時期速度とBeyond RAIDの冗長性を求めてTB2 IFのDroboを導入しようか真剣に悩みましたが辞めました。

10GbEってどうやったの?

今回、Synologyさんの話をお引き受けしたのは、これを個人的に試してみたかったからです。

これまで自分は、実はNASやTB2、USB3有線によるバックアップを併用していて、その理由はホットストレージとしてそれなりの速度が出るものを数TBは用意したいからです。

図がないのでわかりづらいかもしれませんが、基本的には以下の3つで構築されていました。

1. 1000mb/s のワークスペース by TB2
2. 300mb/s ~ 500mb/s の運用ストレージ by TB2 デイジーチェーン
3. 120mb/s のバックアップストレージ by USB3

1. は、カタログデータやPSDなど速度が求められるデータを保管。TB2とSSDのストレイピングで実現されています。2. は、普段から使うのだけど容量も速度もコスパ良く欲しいボリュームで、TB2とHDDで数十TBがデイジーチェーンで連結されていました。直近一年のRAWデータとかPSDが入っています。3. は、単純に全てのデータのバックアップ。これはソフトウェア側でTime Machine 的な機能を利用してシンクしています。

写真に没頭するにつれて増えるデータをやりくりしながらスケールしていった仕組みなので、あまり良いとは思っておらず、どうにかしないといけないなと思っていたところでした。(デイジーチェーンにも限界があるので)

そこで、10GbEで理論上はHDDの限界速度までは期待できるIFでNAS運用してみるのはどうだろうかと思い、Synologyの10GbE環境を試してみようとなったわけです。

10GbEを実現するためにクリアしなければならないいくつかの課題

課題 ① NAS側

Synology NAS側に10GbEインターフェースを用意する必要がある。これは、10GbE アドオンカードというPCIe拡張が可能なSynologyモデルを選択し、さらにこのカードを装着してインターフェースを用意する必要があります。

課題 ② PC側

さらに、当然ながらPC側も10GbEに対応してなければ、お互いが10Gで利用することはできません。自分はMacユーザーなのでMac限定で語りますが、現状10G対応しているMacは、iMac ProMac mini のオプションのみ。

自分の場合は、iMac 5Kを利用していて、これにはThunderbolt 2が二つついているだけなのと、LANは1Gなので、当然無理です。なので、TB2から10GbEへの変換に対応しているアダプタを購入する必要があります。

けっこう値段しますよね。

また、さいきんのMacBook系はThunderbolt 3なのですが、こちらも変換ユニットが必要です。

こんなこれとNASをつなげることで、つながります。しかしイーサネットをNASと直接にしてしまうと肝心のインターネットにはどうつなぐのかという問題もあります。そこで必要なのがスイッチです。

課題 ③ スイッチ

スイッチでは、ルーターからインターネットを通じて、さらにローカルネットワーク内では10GbE接続できるモノが必要です。

こういうもの。スイッチは何でも良いわけではなく、ポイントが2つあります。

・10GbEポートが複数あること
・アンマネージスイッチであること

スイッチには、最低でもルーター、NAS、PCと3つポートが必要なわけですが、このうちの二つNASやPCはお互い10GbEでなければ意味ないので、いくつかあるポートのうちの二つは10GbEである必要ありです。これは四つ全部対応しているので大丈夫。

さらに、ルーターのDHCP機能でIPアドレスを振ってあげないと、ルーターやPCが自分自身の居場所をわからず接続しあえないという悲しい運命が待っているわけですが、そのためにはスイッチが下手なことをマネージしないでいただきたいという事情もあります。なので、この四ポートが10GbEでアンマネージのNETGEARスイッチがパーフェクト。

課題 ④ LANケーブル

LANケーブルは、端子の形状は変わらないのですがケーブルにはカテゴリーというのが定義されてまして、たしかこれが6とか7でなければ10GbEには対応していません。カテゴリーの数値が大きいほど速い速度に対応しています。なので、7あたりを買っておきましょう。

とりあえずこの四つの課題をクリアすれば10GbEはグッドです。HDDの速度限界があるので、あれですが自分の場合は500mb/sくらいの速度は出ています。

しかしまだ自分の環境では問題があります。

NAS一つでデータが全て解決すればよいのですが、上述したように1000MB/sで作業可能なSSDのワークスペースがあります。そしてiMac 5KのTB2ポートは二つ。つまり外部ディスプレイと10GbE変換ユニットで終了して、ワークスペースが使えません。

ここで今から書く荒業を思いつきました。

近代の技、Thunderbolt ブリッジ

先程Mac miniとiMac Proには10GbEがあるという話をしましたが、極端な話iMac Proを購入すれば全ては解決します。

ただ、値段も値段だし2019年内には新型Mac Pro(しかもモジュール式)が発表される機運なので、今買うのは得策とは思えなさそう。ということもあり、今回の問題を解決しつつ、さらにプラスなメリットもありそうな以下の構成を考えました。

小さすぎて全然見えないですね。

iMacからTB2からMac miniと直接つなぎます。これはThunderboltブリッジという方法で、TB2は20Gという仕様なので10GbEは余裕。

TB2二つのポートに対して、一つはディスプレイ、一つはMac miniという形です。Mac miniからは10GbEでNASに接続して、さらにはTB3からTB2に変換して1,000MB/sに接続します。(Mac miniはTB3ポートがいくつかある)

これで双方向的に実質二つのPCがつながったことになるので、ソフトウェアバックアップやDR対策でのクラウド送信などはMac mini専属でやってもらって、iMacのリソースは全て作業に集中することができそうです。

さらに、TB2のデイジーチェーンによるこれまでのストレージも無駄にならない。ということで、Mac miniを今回用に購入して、いずれMac Proが出るまでのつなぎで対応することにしました。

更新:僕はこれでやってますが一般的ではないのであまり参考にはしないでください。そしてその後結局NASの容量が増えて完全NAS移行できました。

忘れてはいけないDR対策

さいごに。DR対策。Disaster Recoveryの略で災害復旧という意味です。

この観点をもっていない運用をよくみるのですが、けっこうデンジャラスだと思っています。studio9の中原さんとかはそのあたりさすがというか、自分より詳しくこのあたりの話も書かれているので、気になる方は是非、すごく参考になると思います。

DR対策は東日本大震災時に各社ハッとしたりして対策はじめたのでご存知のかたも多いかもですが、地震はもちろんのこと火事とかで全焼したり盗まれちゃったら物理的に終了なんですよね。

そうならないように他拠点で保管しておくというのは重要な概念の一つで。

写真家の人はネットワーク、クラウドでデータを保存するということに抵抗のある人も多いのですが、クラウドかなにかで他拠点に分散するという観点はもっていたほうが良いのかなと思います。自分これは100%はできていないのですが、少なくとも納品データレベルは、クラウド保存を二重にしています。

はい、以上。

全く関係ないのですが良かったら定期購読も是非、あんまりこういうことは書きませんが、定期的に何か書いています。


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Akiomi Kuroda / 黒田 明臣
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