クリエイティブの民主化
2000年代におきたインターネットの発展というのは、平たく言えば情報の民主化の歴史と言い換えることができます。たぶん。インフォメーションテクノロジーからITと呼ばれているように、情報技術の発展なんですよね。
これは限られた人だけが知っている暗黙知がオープンとなり、形式知化されることで、知的好奇心を持つ人がその欲求を満たすことができるようになった世界です。
我々一般人の知識やライフスタイルが変わりました。これはもうこんなちっぽけなnoteでは書ききれないほどの多くの変化をもたらしていて、一昔前であれば、居酒屋や職場や家庭で経験豊富な誰かの語るその人ならではの知識を「なるほど」とありがたく拝聴していただけのものが、興味があれば自ら探って誰かから得た知識をインスピレーションに自分の人生に取り入れる時代です。ひと手間くらいは必要でも図書館にも行かず、本屋にも行かず、どこでも片手で比較的簡単に知的好奇心の充足を実現できるような世界です。
2010年当時GoogleのCEOだったエリック・シュミットが、「文明の夜明けから2003年までの間に5エグザバイトの情報が世界に生まれたが、いまは2日間で同量の情報が生まれている」と言ったそうです。これがどれくらいの数字なのか途方もつきませんが、2021年現在2日間で5エグザバイト以上の情報が生まれていることは想像に難くないです。また、これもどこかで見た記事なので話半分に理解してもらえればと思いますが、同じ頃2011年時点で世界には3億5000億枚の写真が世界には生まれていて、そのうちの10%は2011年の直近一年で撮られた枚数だそうです。爆発的に増加しているということはわかりますよね。
写真の増加数というのはほとんどスマートフォンの影響とも言えるようで、自分が写真をはじめた頃、最初に活用していたflickrというサービスも、2013年頃の当時ではほとんどがiPhoneによる写真アップロードだったそうです。
このことからわかるように、そして自分自身もその恩恵を存分に得ているのですが、情報の民主化からデジタルという無形のアウトプットによる際限のなく可能なクリエイティブ活動を通して、2010年代からいよいよクリエイティブの民主化という歴史がスタートしたのだろうと考えています。
それはざっくりとSNSをはじめとした誰もが発信者になることができるプラットフォームの存在や、クリエイティブを楽しむことができるソフトウェアやハードウェアの浸透に起因しています。
月1,000円でプロ・アマ問わず活用できるPhotoshopやLightroomといったクリエイティブツールの発展やVSCOのようなフィルムエミュレーションソフト。フォルター機能で爆発的に流行したInstagramなどなど。Adobeがこれまでのパッケージ型ビジネスモデルからサブスク型のビジネスモデルに構造を改革したことで企業として大きく飛躍していることからも明らか。
2012年頃にピークを迎えるコンパクトデジタルカメラや一眼レフカメラの出荷数、いまではそこからミラーレスカメラといった進化したハードウェアも誰にでも手に入る価格帯となり、テレビ並みに家庭に一台あっても不思議ではない世界になって、それらを使ったクリエイティブ活動を発表する場ももはや選択肢が複数あるような状態。
個人的には、子供の頃、自分に才能があるかないかなんてことは関係なしにパズルや粘土で遊んで楽しめていたクリエイティビティ溢れる幼年時代の興奮を大人になっても別の形で楽しめているような世界という風に見ています。
自分なんかは、上に挙げたいずれか一つが欠けてもいまの自分は存在し得ないと思えるほどに、この歴史にうまいこと乗っかることができたなあと、しみじみ思うわけですが、こういう歴史の恩恵を経てクリエイティビティをビジネスに繋げることができる人たちも爆発的に増えている状況ですよね。
誰でもストックフォトビジネスに参加できるし、C2Cのマッチングビジネスはスタジオ経験なくともカメラ一つでチャレンジ可能。あとは自分次第で20年前では人生をかけて打ち込まなければ踏み入れることもできなかった道に足跡を残す事ができるようになってきている。
これこそがクリエイティブの民主化だなあと思うわけです。
そしてこれはまだピークにもなっていないのだろうというのが自分の見立てです。
ここで話は変わって、ヒーコの話。
ヒーコはクリエイティブの民主化という時代を生きるクリエイターや、そのクリエイティブを必要としている企業の間に立って価値を提供しようと模索している会社です。
これまでもクリエイターだった人が時代に適合していくために、これからクリエイターとしても活動したいという人がそのクリエイティビティをビジネスにつなげるために、ブランドスタジオビジネスとクリエイティブスタジオビジネスという形で存在して、クリエイティブの楽しさを通して人生を豊かにするための価値を提供するメディアスタジオビジネスとしています。
必ずしも新時代のクリエイターと呼ばれる人たちだけではなく、現代ならではのクリエイティブとはということを考えています。
こういうビジネスを展開している企業は多く、その殆どはプロダクトビジネスと言われるような、仕組みを構築してそこにリソースを投入するモデルですが、ヒーコの場合は小さくても良いのでも仕組みというよりも手作り感あるプロフェッショナルビジネスないしメソドロジーの確立を模索しています。
クリエイティブの民主化というのは、我々にとって非常に重要なキーワードで、目の前のことを大切にするのはもちろんなんですが、こういうマクロ視点で広く俯瞰で世の中を見つめるということも意識的にやっていくことが道を迷わないために重要なことだなあと思って、そういうことを深く考える時間が増えました。
そしてここからがもう一つテーマなのですが、ミクロな話で言うと、黒田個人はクリエイティブの民主化とはいえ、誰でもフリーランスになってそのクリエイティビティに100%依存したビジネスにしようというのは反対する派です。
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