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Clubhouse をソーシャルメディア観点で5つのポイントに分解してみた

さいきん流行りの #clubhouse 。各所で様々な切り口で語られていたり、SNSでも多くの寸評が飛び交ってますけど、語りたくなる気持ちがよく分かるサービスで、久々に興奮しますね。

ということで、せっかくなので、感じたことを書き連ねてみようと思います。

ちなみに、clubhouseの背景も歴史も詳しくは知りません。あくまで一ユーザーとして感じたことです。Twitterで呟くには文字数が足りなかったのでnoteに書いたくらいのテンション。つぶやきの延長線上だと思って読んでください。

自分はソフトウェアエンジニアとして、十数年?大規模のモバイルを中心としたウェブサービスなどB2C系のサービスやらB2BのSaaSの立ち上げやら色々エンジニアのポジションですけど、一応プロダクトのグロースを目的として試行錯誤してきた過去があって、それからソーシャルメディアを舞台にクリエイティブ事業を営む会社を経営したりとど真ん中ではないもののニアピンなところにいることもあって、考えさせられることは少なくありませんでした。

Clubhouseとは

これも言うまでもないことですが、clubhouseというのは、SNS的なフォロー要素を持った雑談コンテンツのサービスです。Twitterならつぶやき、Instagramなら写真、clubhouseなら音声という点が特徴。さらに、TwitterやInstagramは一人が個人的に発信するものですが、clubhouseでは基本的に複数人が集まって雑談することがコンテンツとなっているので、ソーシャルネットワークと相性が良いというのが特徴なのかなと思います。

各所で語られている通り、プロダクト体験とグロースそれぞれ設計が良く出来ていて、色々ポイントはあるんですけど、個人的にすごいな〜と思ったのは以下5つポイント。

1. コンテンツ化の容易さ
2. ソーシャルメディアに深度を持ち込んだ
3. 聞くリニアと見るノンリニア
4. コンテンツへのFOMO
5. セレンディピティ

いずれもUI/UXといったところよりも体験の設計が肝だと思うんですけど、一つずつ。

1. コンテンツ化の容易さ

こういったウェブサービスは、

a. ユーザーが気軽にコンテンツを作れるか
b. コンテンツの体験価値が高いか

という点のシーソーゲームだと考えています。

つぶやくのは簡単だけど体験価値の高いものを生み出すのは難しく、YouTubeのように動画コンテンツを作るのはハードルが高いけど作りにこだわれば体験価値には無限の可能性があります。

これらはある程度トレードオフな関係で、各ソーシャルメディアを四象限であらわせるような分類だと思っているんですが、clubhouseは気軽にコンテンツ化できるのに体験価値が高いという良いとこ取りをしているのが大きなポイントだなあと。

何故ならば、ボタン一つで雑談をはじめることができて、その雑談というのは喋るという多くの人にとって日常な行為の延長なので非常に気軽なんですよね。これはオフラインでもオンラインでも変わらない法則ですが、人が二人集まれば、そこには会話が生まれて、それはコンテンツになるということに着目されているのが意外と新しく、驚異的。

このポイントを後押ししているのが、招待制によってKOL(キーオピニオンリーダー)やいわゆるインフルエンサーなど比較的文化的ポジションを確立している人を中心に広まった所だと思うんですが、この相乗効果は凄まじいのが現状のこれだけ話題になっている通り、という感じ。実効再生産数2.0というのもありますけど、招待制という中でもここまでのムーブメントになっているのはこの掛け算がうまく機能しているな〜という印象。

例えば、YouTubeで同じようなことをしようと思えば、必ず顔出しをどうするかであったり、制作して編集してどうするかであったり、そこには「悩む」余地が必ずありますし、stand.fmやVoicyなどいわゆる音声系サービスという軸でみても、一人で喋り続けなければいけないという「悩み」があります。また、インスタライブにしてもセルフィーなどが機能として盛り込まれているために、顔出しするほうが正なのではないか?という疑念がコンテンツ化の容易性を妨げているんですよね。

なので、これは一口に「音声サービスがアツい!」というよりも、「雑談をコンテンツ化する最短距離」が設計されている事がスゴイ。

YouTubeもInstagramも、stand.fmなどの音声系サービスも機能的には同じことを実現できるものの、上記の悩みがそのまま課題となり中々浸透するにはハードルがあります。個人的にどれも試した事がありますけど、実際このように何か書きたいと思うほどの体験はありませんでした。

正直自分もはじめて clubhouse で話してみた時に、インスタライブじゃだめなの?と思いましたけど、これは大きな勘違いでした。たまたまそこで聞いていてくれたラブグラフのこまげ君も言っていたことですが、本当にプロダクトとしてよく出来ています。

そして上述した小さな「悩み」というのはプロダクト観点ではそのまま浸透への「課題」につながっているわけですけど、clubhouseはそれを仕様として「それ以外の選択肢を与えていない」ことで、解決していると言えるのですごいな〜と。

あらゆるルールメイクやゲームメイクに言えることですが、「なんでもできる」ではなくゲームを楽しむために「あえて制限する」事は成長性にとって非常に重要なことだと思います。

亡き父が言っていたことですが、野球と比べてサッカーがここまでグローバルに流行ったのは、「ボール一つで実施可能で複雑ではないからだ」と。当時中学生くらいだった自分はなるほどな〜と思っていて聞いていましたが、いま改めて実感値をもって感じますね。

2. ソーシャルメディアに深度を持ち込んだ

これも重要だなと思っていて、いわゆる4マスに代表されるマスメディアというのはトップダウンのメディアアプローチで、ソーシャルメディアというのは誰にでも開かれた発信の場でした。

それによってYouTuberやインスタグラマーといった多くのインフルエンサーをこの10年で生み出した歴史があるわけですが、それも成熟期に入ってきているというのは各所で言われているところだと思います。

そのソーシャルメディア成熟期にど真ん中で当ててきたなというのが clubhouse に対する印象で、この10年で生まれたマスメディアとソーシャルメディアを行き来するような人やSNSに強みを持ったインフルエンサーにとって、一つ目のポイントの通り「気軽に体験価値の高いコンテンツ」をつくることができるというのは相乗効果になっているなあと。

つまり、こういうサービスがTwitterやInstagramがここまで浸透する前に開始されていてもこのような拡散は見込めなかったのではないかなあと思います。

いまは、ある程度インフルエンスがあって自分のネットワークを既にデジタル上で持っている人が多数いるので、そういった人たちが周りの人達を多く巻き込んでコンテンツ化できることで小さなテレビ番組、ラジオ番組のようなコンテンツを有機的、自発的に生み出させているというのが恐ろしいところなのだと思います。

我々はスキマ時間を、古くはマスメディアで消化し、この20年程度の歴史でソーシャルメディアで消化するように変化してきました。マスメディアでは、トップダウンすぎて、ソーシャルメディアではボトムアップすぎて分母が大きすぎる現代において、その中間を狙うことによって

マスメディア < ------> ソーシャルメディア

という構図を、

マスメディア < --- 中間 ---> ソーシャルメディア

の中間に位置するポジションを確立しようとしている、つまり二極化していたコンテンツによるコミュニケーションの間を取ることでソーシャルメディアの深度を広げたと言えるのではないかと見ています。

3. 聞くリニアと見るノンリニア

メディアにはリニア性の長短があると田端信太郎さんがMEDIA MAKERSという著書で書かれていました。例えばTwitterのようなノンリニアなメディアは一つのつぶやきというコンテンツを消化するのに数秒しかかかりませんが、例えば映画なんかはリニア性が高く2時間程度見続けなければコンテンツを消化することはできません。

YouTubeはものによりますが多くは30分以内で、TikTokに至っては数秒。TikTokというのも、YouTubeと比べて1. のコンテンツ化の容易さという点で優れているのが浸透したポイントだと思っていますけど、clubhouseはそれに対して、聞く分にはリニアなものの、「ながら聞き」ができるので聞きながらTwitterやInstagramをアプリ上で見ることもできるわけで、リニアに聞きながらノンリニアにその他コンテンツを楽しむことができるという点が優れています。

clubhouseではモデレーターの方が複数名で話しながら視聴者が聞くというのが定番の構図ですが、バックグラウンドでも音声を流しながらその他アプリを使えるので、聞きながらその他のサービスで可処分時間を同時に消化できるというのは大きなポイントなんだろうな〜と。これが聞き続けなければ他に何もできずにスマホを専有してしまうようなサービスでは中々こうも視聴者巻き込みつつグロースしていくことはなかったのだろうなと思います。

自分が話している範囲でも、話しながらGoogleで検索して話題に対して追っかけたりとかが普通に起きるんですよね。これも「ながら」を許容されたプロダクトならではのポイントですよね。

4. コンテンツへのFOMO

FOMOというのは、「fear of missing out」の略で、取り残される恐怖感を示しているのですが、言葉自体は数年前から出ていたそうで、clubhouseのバイラルに合わせて改めて取り上げられています。ただし、多くの記事では招待制である点について、参加しなければ取り残されるといった文脈で語られているのですが、どちらかというと招待してもらってからのほうが大きいような気がします。

現状ではclubhouse上の音声コンテンツはアーカイブされないのと、上述の通り音声としてはリニアに聞き続けなければコンテンツ消化できない仕様になっています。しかも音声ライブで、リニアなしくみだからこそ「ぽろっと言ってしまう」という編集不可の雑談が繰り広げられることにポイントがあるわけですけど、そういった「気になるコンテンツ」が視聴しなければ聞けないことになってしまうので、イメージとしては「土曜日めちゃいけ見ておかないと月曜日クラスの会話に取り残される」みたいな方がイメージに合うような気がします。

これは、2. のマスメディアとソーシャルメディアの中間にあるという観点で見つめても、同時並行的に発信されているコンテンツのどれに触れるか?という点でマスメディアとソーシャルメディアの中間にいるなあと思うわけです。

5. セレンディピティ

最後にセレンディピティ。

これはハッとして呟いてしまった内容の補足でもあるんですけど、元々ステイホーム期間や全世界的にトレンドとして続いている中で、セレンディピティが人生から急速に失われているなあと日々感じている課題感がありました。

幸福は移動距離に比例するという言葉もありますが、移動することによって我々は様々な広告、街の光、時間の流れ、雨や風や日差しなどの自然、様々なことを五感で体感していて、それによって生まれるひらめきなど思いがけない幸せを得ていて、それこそはセレンディピティであると自分は考えているわけですが、clubhouseにはセレンディピティを誘発する仕組みにあふれています。

ROOM内でAさんとBさんが会話されているといった何気ない雑談一つとっても、これまでの人生では決して出会うことのなかった声という温度のあるコミュニケーションをコンテンツとして感じることができます。それがライブで仕掛けなしに行われていることは視聴者にもわかる仕組みになっているので、視覚情報に頼り切っていた我々としては偶然的な楽しみを得られているんですよね。

それに輪をかけてポイントなのが、ランダムに、そしてラフに壇上にあげられるライブ感が文化として早くも根付いている点。これは本当にすごくポイントです。

それを可能にしているのは、UI/UX的なところもあるんですけど、やはり音声のみで繋がることができるという参入障壁の低さ。顔出しも不要でお風呂に入りながら話していたり、自分のようにベッドで寝ながら話していたりという事も可能なんですよね。

例えば一度お会いしただけだったんですが、ベッドで聞きながら寝落ちしようかなと落合陽一さんのROOMを聞いていたら突然お呼びいただいて二人でお話したりということがありました。こういったことが起きちゃう世界観です。

自分が落合さんとお会いしたのは、ライカブティックで行われた個展のレセプションにお邪魔していた時に偶然お話できたという経緯なんですけど、これもセレンディピティのようなきっかけでした。これはまたclubhouseで同様にセレンディピティが起きたとも言えると思うんですよね。

clubhouseに入ってみるとわかりますが、紹介しあったりということが当たり前のように行われています。

偶発的な出会いというのは、テキストや画像ベースのSNSであるTwitterやInstagramにも言えることですが、音声のコミュニケーションというのはフォローという記号的な認知よりも遥かに前進したコミュニケーションなんですよね。

フォローしあって、久しぶりと言うことはないと思いますが、おそらくclubhouseを通して久々に話せば自然と「久しぶり」という言葉が出てきます。それくらい音声による距離感というのはテキストベースの距離よりも遥かに近いんだろうと思います。

まとめ

これらを総合すると、インフルエンサーの方を中心にコンテンツ化の容易さを最大活用してソーシャルメディアの深度を持ち込んだことでコンテンツが量産されていることでバイラルが熱量高く自然発生するように設計されていること、ノンリニアに参加可能にすることで、発信側も受け取り側も気軽に滞在し続けられること、FOMOなど人間の根源的欲求や不安にタッチできる設計がUGCで回るようになっていること、いま失われているセレンディピティをを誘発できること。などなどがポイントなのかな〜と。

音声サービスであるという点や、招待制という仕組み。そしてUI/UXの良さが挙げられたり語られたりすることが多いんですけど、個人的にはそういうポイントを押さえていて優れているサービスというのは世の中にも数多くあるなと思っていて、clubhouseはどちらかと言うともう少し柔らかいところで現代を生きる我々にタッチするサービスだな〜という印象でした。

このままグロースするかどうかは、どこまで今バイラルに貢献しているインフルエンスのある人たちが定着するかにかかっていると思いますが、先が楽しみ。

周りの友人含め全員が参加しはじめた時にやりたいことなども浮かんできているので、自分もしばらくは使ってみるつもりです。

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